この世にある毒、社会の毒、他人の毒、自らも抱える毒、つまるところそれは人間そのものの毒、人として生きるが故の毒―――無明かもしれない。
今多コンツェルンの会長の婚外子である娘と結婚したことにより今多コンツェルンに就職し会長直属の広報室で社内報を編集する杉村三郎。その男が主人公となるシリーズの第2弾、「誰か」の続編。
広報室でひとりのアルバイトを雇った。編集経験があると称して採用された原田いずみは質の悪いトラブルメーカーだった。解雇された彼女の連絡窓口となった杉村三郎は、極端なまでの経歴詐称とクレーマーぶりに振り回される。折しも、街では連続無差別毒殺事件が・・・。
この世にある毒の名を知りたいのなら、自分で見つけに行きなさい。あなたが、自分で突き止めるんですよ。
不運にも毒に触れ、それに蝕まれてしまうとき以外、私たちはいつも、この世の毒のことなど考えないようにして生きている。日々安らかに過ごすには、それしなほかに術はないから。
突っ立ってただ問いかけているだけでは、誰も毒のことは教えてくれない。それがどこから来て、何のために生じ、どんなふうに広がるものであるのかを。
どうすれば防げるのかということも。 (P597)
内容(「MARC」データベースより)
あらゆる場所に「毒」は潜む-。財閥企業で社内報を編集する杉村三郎が、私立探偵・北見を訪れて出会ったのは、連続無差別毒殺事件で祖父を亡くしたという女子高生だった。現代ミステリー。
出版社からのコメント
日常のいかなるところにも潜伏し、いつその触手を伸ばすともしれぬ毒に対して、人はあまりにも無力なものですね。──中谷美紀(女優)
ありふれた毎日に潜む「毒」は、確かに私の中にもあり、この小説を読むことは、その「毒」の姿を確かめることに似ていました。怖いのに見ないではいられない。こんなにも面白くて、こんなにも苦しい小説があるなんて。──草野満代(キャスター)
メモ
私のこの家に、汚染はなかった。家のなかは清浄だった。清浄であり続けると、私は思い込んでいた。信じ込んでいた。
だが、そんなことは不可能なのだ。人が住まう限り、そこには毒が入り込む。なぜなら、我々人間が毒なのだから。
原田いずみには毒があった。外立君にも毒があった。外立君はその毒を、外に吐き出すことで消そうとした。だが、消えなかった。ただ不条理に他社の命を奪い、彼の毒はむしろ強くなって、もっとひどく彼を苛んだだけだった。
原田いずみはどうなのだろう。彼女の毒は、彼女自身を侵してはいないのか。彼女の毒は無限増殖し、どんなに吐き出しても涸れることはないのか。
その毒の名前は何だ。
・・・・
私は、我々の内にある毒の名前を知りたい。誰か私に教えてほしい。我々が内包する毒の名前は何というのだ。 (P553)
「どこにいたって、怖いものや汚いものには遭遇する。完全に遮断することはできん」
それが生きるということだ―――と呟いて、片手で軽く壁を撫でた。
(P573)
―――杉村さん、やればいいのに。
この世にある毒の名を知りたいのなら、自分で見つけに行きなさい。あなたが、自分で突き止めるんですよ。
不運にも毒に触れ、それに蝕まれてしまうとき以外、私たちはいつも、この世の毒のことなど考えないようにして生きている。日々安らかに過ごすには、それしなほかに術はないから。
突っ立ってただ問いかけているだけでは、誰も毒のことは教えてくれない。それがどこから来て、何のために生じ、どんなふうに広がるものであるのかを。
どうすれば防げるのかということも。 (P597)
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